※当記事は2013年当時の状況に基づいた内容となっており、現状とは異なる点が多々あります。現在では単管による基礎工事は行っておりません。ですが、太陽光発電所が普及する以前の福島での、弊社の試行錯誤の歴史として残しております。
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「雪国野立てソーラー 2.実験データ・冬」
ほんとうに雪国に合う「野立て」とは?
2013年夏、弊社の太陽光発電実証実験設備が稼働を始めました。
積雪の問題から、長らく「太陽光発電は無理」と言われてきた福島。ですがパネルの性能向上で発電量が上がったことや、補助金や固定価格買取制度により、屋根への設置は普及が進んできました。
しかし、空き地に太陽光発電パネルを並べる、いわゆる「野立て」に関してはまだ課題が多く、簡単には取り組むことが出来ないのが現状です。
「野立て」の課題
積雪
パネルに積雪し発電しない。滑り落ちても地面に積もり続ければパネルが埋まり、発電できなくなる。
埋もれさせないためには地上2m以上の架台を設置しなければならないが、高さのある架台を支えるためにコンクリートで基礎工事をすると、費用がかさむ。
風による被害
風でパネルが飛ばないように、頑丈な土台を作らなくてはならず、費用がかさむ。
高さがあり、風に強い頑丈な架台にするためにはコンクリートの基礎工事が必要とされています。
ですが、コンクリート架台には様々なデメリットがあります。
コンクリート架台のデメリット
- 高コスト。費用回収に時間がかかる。
- 工期が長くなる
- 設備を撤去し更地に戻す場合、高額な撤去費が発生。
- 電気の買い取り期間20年後も売電を継続するかは不明。
もし20年で終了する場合「40年~50年保つ」ような大掛かりな基礎は無駄になる。
もし買取期間の20年後も売電するのであれば、その時に補強や作りなおしをすればいいのではないか…と、弊社は考えます。
理想の架台の条件とは
・設置も撤去も容易
・高さがあり積雪に埋もれない
・風にも強い
・費用も抑えられる
「単管架台を工夫する」ことで、全ての条件はクリアできるのでは?
私たちはそう考えました。
「単管基礎」の工夫
単管 (たんかん) とは「単管パイプ」 の略称です。建築現場で作業をするための足場用資材としてよく見かけます。
「メガソーラー」で検索すると各地の大規模発電施設の画像が次々現れます。大きなコンクリートブロックを鉄骨に履かせたような架台や、架台そのものがコンクリートのがっしりした直方体になっていたりとかなり頑丈に作られているのが判ります。
それと比べますと、単管はいささか頼りなく見えるのは否定できません。
しかし、ドイツをはじめとする太陽光発電を大規模に推進してきたヨーロッパの国々では、単管での設置が普及しています。
単管でどのように架台を作るのか、どのような実験をするのかを以下で詳しくご説明します。
「雪国野立てソーラー」設置パタ-ン一覧
「雪国野立てソーラー」(一部にコンテナを利用したため「ソーラーコンテナ実験」としました)は、一基ずつ角度や設置方法を変え、全部で9パターン設置しました。
表にまとめると次のようになります。
この実験で確かめたいことは以下の点です。
- 角度による落雪の違い
- 設置方法による風の影響の違い
実験した設備の内容
単管パイプ打ち込み基礎
どのパターンも基礎となっているのは単管パイプです。地中1mまで差し込まれた単管杭で地面に固定しています。今回の実証実験ではコンクリート基礎工事は行っていません。「単管パイプ打ち込みだけでも耐えられるのではないか」という仮説を検証するためです。
コンクリート基礎にした場合の弊害についてはご説明しました。
「基礎工事のない安い架台でパネルが飛ばされたら元も子もない」のはもちろんですが、単管パイプだけの架台は本当にそれほど信頼出来ないものなのか?本当に強風で飛ぶのか?
それを身をもって確かめてみなくては、お客様に対し、基礎工事について明確にご説明できません。
そしてもし当実験により「雪国でもコンクリート基礎なしで野立てソーラーができる」と実証できれば、福島の太陽光発電はもっとスムーズに普及していくのではないか。そう願っての実証実験です。
パターンの違い 1.重りの有無
上図の一覧表で、「+重り」はコンクリートを詰めた缶が、「コンテナ」は鉄道コンテナが、パネルの架台に組み込まれています。
単管パイプの架台だけでは風の影響が心配ですが、コンクリート基礎ほど大掛かりではない、どの程度の「重り」が必要になるのかという実験です。
コンクリート缶の重り
鉄道コンテナ
パターンの違い 2.パネル間の隙間の有無
次に「パネル間の隙間」です。
写真でおわかり頂けますように、通常屋根の上では横長に設置されているパネルを縦長の状態で設置しております。
屋根上のように横長に設置するとパネルの長辺部分に付いている金具の関係で、上段と下段の間に必ず隙間が出来てしまいます。その隙間に雪が入り込んで凍り、落雪の妨げになることを避けるための処置です。
ですが隙間が全く無い場合、風が抜ける隙がありません。強風の際にパネル全体がまともに風を受け、倒れる可能性があります。
そこで左右方向に隙間を設けることにしました。
風抜けと雪の影響、双方を検証するために、左右方向の隙間あり・なしの両パターンを用意しました。
パターンの違い 3.パネルの角度
発電に適したパネルの角度は通常30度です。ですが今回のソーラーコンテナの設置は45度をメインにしています。落雪を考慮すると、30度では落雪効果が低いようです。
比較のために30度、40度、50度でも設置しました。落雪・発電効果にどの程度差があるのか確かめたいと思います。
また0度の設置は、陸屋根のお客様へ今後データ提供することを目的にしています。
ページ公開…2013年11月